植え時

いちごのプランター栽培の育て方|実がつくかは「2つの寒さ」で決まる

公開 2026.09.15菜園びより 編集部

いちごのプランター栽培は、秋に暑さが抜けること(花芽分化)と、冬の低温(休眠打破)という2つの寒さで春の収穫が決まります。

タキイ種苗のイチゴ栽培マニュアルによれば、イチゴは「初秋から晩秋に平均気温が25℃付近まで下がると短くなった日長に反応して花芽を分化するようになります」。春に最初に咲く花房(頂花房)のもとは、秋のうちに作られます。そのあと株は休眠に入り、「その後、冬の低温で休眠打破され、春になって温度が上昇すると開花結実します」。つまり秋は最初の花房ができるかどうかが決まり、冬は春に伸び出せるかが決まるという、役割の違う2つの寒さ(この呼び方は当サイトのものです)が要ります。農研機構の成果情報(1996年・アーカイブ表示あり)では、休眠覚醒に要する5℃以下の低温遭遇時間は品種によって250時間以下から1000時間程度まで開きがあります。ここをまとめて「冬の寒さ」で片づけると、暑いうちに植える・肥料を効かせすぎる(花の数が減る)と、寒そうだから室内に取り込む(春に動き出す力が削られる)という、結果の違う2種類の失敗が起きます。ただし後者を「室内に入れると咲かない」と書いた資料は見つけられませんでした。低温要求量からの当サイトの判断です(7章)。この記事は秋に植えて春に採る一季なりを対象に、苗選び・植え付け・冬の置き場所の判断基準を一次情報から組み立てます。

結論|いちごに要る寒さは2つあり、時期も役割も違う

ポイント

秋の寒さは花の数を決め、冬の寒さは春に動き出せるかを決めます。同じ「寒さ」でも、間違えると打つ手が逆になります。

いちごの育て方を調べると、水やり・肥料・日当たりの話は山ほど出てきます。ところが春に咲く花がいつ作られるのかに答えている記事は、今回確認した上位5本にはありませんでした。ここが分かっていないと、秋にやることの意味が全部あいまいになります。まず2つの寒さを分けます。

表1:いちごが必要とする2つの寒さ(数値と機構は下記の一次情報。★は当サイトの推論)
① 秋=暑さが抜ける(花芽分化)② 冬=低温(休眠打破)
起きる時期初秋〜晩秋(日平均気温が25℃付近まで下がるころ)休眠が最も深くなるのは11月ごろ。そのあとの冬
条件短くなった日長+気温。日平均25℃以上では花芽形成が完全に阻害される5℃以下の低温の積算。必要な時間は品種差が大きい
決まること春に最初に咲く花房(頂花房)ができるかとその花数(★頂花房と特定しているのは当サイト。タキイは「花芽を分化する」までしか書いていません)春に伸び出せるか(葉が展開して開花へ向かうか)
足りないと花芽分化が遅れ、花数が減る★休眠が覚めきらず、春の生育が揃わない(資料は低温要求量の値までしか示していません)
出典タキイ種苗 イチゴ栽培マニュアルタキイ種苗/農研機構 成果情報(1996年・アーカイブ表示あり)

秋に決まるのは、最初の花房(頂花房)までです。そのあとに出る花房(腋花房)はもっと後に分化します。栃木県農業試験場は促成栽培について「保温開始は、花房の連続性を良くするため、第1次腋花房の花芽分化を確認してから行う。」としており、第1次腋花房の分化が確認できるのは保温開始のころ(同資料では10月10〜25日)です。収穫量の大半はこの後続の花房なので、春の管理(葉かき・水・日照)も収量に効きます。 この2つは、やるべきことが正反対に見えます。秋は「暑さが抜けるのを待つ」、冬は「寒さに当てる」。ひとまとめに「いちごは寒さに強い」「冬は防寒を」と書くと、どちらかを必ず取りこぼします。以下は、これを月の作業に落としたものです。

表2:秋植え(一季なり)の年間スケジュールと、そのとき効いている寒さ。**時期と冬の置き場所は一般地**の目安(寒冷地は[7章](#fuyu)のnote)
時期やることそのとき効いている寒さ根拠
9月中旬〜10月末苗を買って植え付ける(日平均気温が25℃を下回ってから)① 暑さが抜ける=花芽分化タキイ通販Q&A「一般地での定植は9月中旬以降、遅くとも10月いっぱいで終了してください。」。気温の線は、これと「25℃以上の高い温度では、イチゴの花芽形成は完全に阻害され」(栽培マニュアル)を合わせた当サイトの判断
11月1回目の追肥。根を張らせて越冬させる①→②へ移行。休眠が最も深くなるころタキイ栽培マニュアル
12月〜1月屋外の日が当たる場所に置いたまま。水やりだけ続ける② 休眠打破(5℃以下の積算)この置き方は当サイトの判断(7章のnote)。低温要求量の数値だけが農研機構(1996年・アーカイブ表示あり)
2月ごろ2回目の追肥。葉が伸び出したら保温を始め(日中は開けて換気)、同時に老化葉・枯れ葉を株元から取り除く(新葉5〜7枚のころ)②が済んだあと。伸び出した地上部は低温に弱いタキイ栽培マニュアル(休眠明けの目安として2月上中旬/葉かきは新葉5〜7枚のころ)。「葉が伸び出したら」という状態への読み替えは当サイト
4月〜開花・人工授粉・ランナー除去。霜の夜は覆い、翌朝外す寒さではなく積算温度の世界に入る開花の温度はタキイ栽培マニュアル、花粉と低温は吉田2024。「霜の夜は覆う」はこの2点からの当サイトの判断(9章)

なぜ秋に植えるのか|花のもとは、植え付けの前後に作られる

ポイント

いちごの花芽は、植え付けの前後に、温度と日長に反応して作られます。「植えれば春に咲く」のではなく、この時期の温度が花の数を決めます。

タキイ種苗のイチゴ栽培マニュアルは、花芽分化についてこう説明しています。「イチゴは夏の高温・長日条件下ではランナーによる栄養繁殖を行い、初秋から晩秋に平均気温が25℃付近まで下がると短くなった日長に反応して花芽を分化するようになります。25℃以上の高い温度では、イチゴの花芽形成は完全に阻害され、温度が12~15℃以下となると日長にかかわらず花芽を分化します。品種間差はありますが、15~25℃の範囲においてのみ短日条件化で花成誘導が起こります。」

表3:日平均気温と花芽分化の関係(**温度と分化の2列はタキイ種苗 イチゴ栽培マニュアルの一文を整理したもの。右列は当サイトの読み**)
そのときの日平均気温花芽分化は読者にとっての意味
25℃以上完全に阻害されるまだ暑いうちは、日が短くなっていても花芽はできない
15〜25℃短日条件でのみ誘導される気温が下がり、かつ日が短くなって初めて進む
12〜15℃以下日長に関係なく分化する十分に冷えれば日長は条件から外れる。ただし、そのころには株の生長そのものが鈍る。「寒くなってから植えればいい」にはなりません(下の締め切り)

温度はどれも日平均気温の話です。天気予報の最高気温・最低気温ではありません。自分の地点で日平均気温が25℃を下回るのがいつかは、気象庁の過去の気象データ検索で地点を選び、データの種類から「日ごとの平年値を表示」を選んで、平均気温の列を9月・10月で追い、25.0℃を下回る日を探します。月ごとの平年値では出せません。月平年値はその月を平均した1つの数で、境界の日は月の途中に来るからです。ここを取り違えると、最高気温で待てば10月下旬まで動けず、最低気温で判断すれば9月上旬に植えてしまうという、ひと月単位のズレになります。

ここから素直に出てくる結論が、まだ暑いうちに植えないです。タキイネット通販のQ&Aは、植え付けの時期をこう区切っています。「イチゴの植え付けは、一般地での定植は9月中旬以降、遅くとも10月いっぱいで終了してください。」始まりだけ、あるいは終わりだけを示すのではなく、両方に線が引かれているのがポイントです。早すぎれば高温で花芽分化が進まず、遅すぎれば株が育つ前に寒さで生長が止まります。

❌苗が店に並んだ9月上旬に、待ちきれずに植える

⭕日平均気温が25℃を下回ってから植える。タキイの示す一般地の枠は「9月中旬以降、遅くとも10月いっぱい」。暑さが残る年は枠の後半に寄せる

❌枠の終わりを過ぎてから、売れ残りの苗を買い足して植える

⭕11月以降は新たに買い足さない。遅植えは花数が減る方向に働きます(3章)。すでに苗が手元にあるなら植えて越冬させ、翌春にランナーを採る親株にする(FAQ4)

苗選び|「大きい苗」ではなく「老化していない苗」を選ぶ

ポイント

タキイの栽培マニュアルは、花が咲かない原因を3つ挙げています。そのうち2つは、苗と植え付け方の問題です。

マニュアルの「花が咲かない」の項には、こう書かれています。「露地栽培では秋遅くに老化苗を植えると、苗の生長は低温の影響で定植後すぐに止まり、花芽の数が少なくなります。また定植が早すぎたり、多肥で栄養生長にかたよると花芽分化が遅くなり花数が減ります。」 短い一文ですが、①老化苗 ②早すぎる定植 ③多肥という3つの原因が並んでいます。②は2章、③は6章で扱います。ここでは①を見ます。

  • クラウン(葉の付け根の太い部分)が太く、しっかりしている。ここが葉も花も出てくる成長点です
  • 葉柄が間のびしていない。日照不足の売り場で徒長した苗は、植えてから立て直しにくくなります
  • 下葉が枯れ込んでいない。ポットの中で根詰まりしている株は、植え替え後の伸びが鈍ります
  • ランナーの跡が確認できる。これは品質ではなく、植え付けの向きを決める目印になります(4章)

はじめて育てるなら、ウイルスフリー苗として売られているものが安心です。タキイの栽培マニュアルも、初めて栽培するときは園芸店や種苗店で苗を買い、ウイルスフリー苗を選ぶことをすすめています。自分でランナーから苗を採る場合は注意が必要で、同マニュアルは「1節目の子苗(太郎苗)はウイルス病などの病害に感染している危険性があるので使うのは避け、2節目以降(次郎苗、三郎苗)を育てます。」としています。親株のいちばん近くにできた子株が、いちばん使ってはいけないというのは、感覚に反するので覚えておく価値があります。

―品種によって、必要な寒さの量が数倍違う

苗のラベルには書かれていませんが、休眠の深さ(=休眠を覚ますのに要る低温の量)は品種で大きく違います。農研機構(野菜茶業研究所)の成果情報は、品種ごとの低温要求量を次のように示しています。

表4:休眠覚醒に要する5℃以下の低温遭遇時間(農研機構 成果情報・1996年/アーカイブ表示あり。**原典が「一季成り性」と明記しているのは‘女峰’のみ**)
品種休眠の深さ5℃以下の低温遭遇時間
‘女峰’(一季成り性)浅休眠性250時間以下
‘宝交早生’(一季成り性)中休眠性500時間程度
‘ベルルージュ’(一季成り性)深休眠性750時間程度
‘Aiko’・‘Pajaro’(中間性)極深休眠性1000時間程度

植え付け|クラウンを埋めない、そして向きを合わせる

ポイント

いちごの植え付けには、他の野菜ではあまり問われない2つの作法があります。クラウンを地上に出すことと、実が出てくる向きを決めることです。

まず深さです。タキイの栽培マニュアルはこう書いています。「株間30~40cm程度で苗を定植します。葉の付け根のクラウン部分(葉の成長点)を地上に出すように植え付けます。この部分を埋めてしまうと生育が悪くなったり、病気にかかりやすくなるので注意します。」クラウンは葉も花も出てくる成長点なので、ここを土に埋めると生育が悪くなり、病気にもかかりやすくなります。逆に浅すぎて根が露出しても活着しません。クラウンが見えていて根は隠れている状態が目安です。

―実が出てくる向きは、苗の側にあらかじめ決まっている

栃木県の研究報告(稲葉幸雄「イチゴの生理生態特性の解明による周年生産技術の開発および周年栽培品種の育成と普及に関する研究」)は、先行研究を引いてこう記しています。「イチゴの花房は,採苗時に残したランナー軸の反対方向に伸長することが古くから知られており(本多,1977;香川,1971),ランナー軸は定植時に株の花房伸長方向を見極めるための重要な目安となっている.」(この一文は緒言で本多1977・香川1971を紹介した箇所で、栃木県自身の新しい知見ではありません) 産地でこれが重視される理由も同じ資料にあります。「イチゴは2条高畝栽培が一般的である.この栽培法では,花房を通路側に伸長させ,収穫作業の効率化を図っている.」

家庭向けの言い方に直したものが、タキイネット通販のQ&Aにあります。「実のなる方向が畝の外側になるように植えると収穫しやすく、また、果実に光が当たるので着色もよくなります。実になる花房はランナーのあとがある方の反対側に出てきますので、ランナーあとを畝の内側に向けて植えます。また、クラウン(葉の付け根のふっくらとした太い部分で生長点がある)の傾いた側に花房が伸長するので、苗を20~25度傾けることで発生方向を調節できます。」

この「内側/外側」という言い方が成り立つのは、畝の両側に通路がある植え方を想定しているからです(「イチゴは2条高畝栽培が一般的である.」と書いているのは栃木県の研究報告のほうで、タキイの2つの資料自体は条数に触れていません)。畝では列が向かい合い、実は両側の通路へ垂れます。プランターは1列なので、「内側に向ける」と実は左右の短辺から出てしまいます。やりたいのは「実を手前に垂らす」ことなので、置き換えるならランナーの跡をプランターの奥(壁・手すり側)に向けるになります。この置き換えは当サイトによるもので、引用元はいずれも畝の話をしています。

❌苗を袋から出して、向きを見ずにそのまま等間隔に置いていく

⭕ポットから抜く前に、ランナーの切り跡を確認する。跡は2つあることがあります。タキイの苗作りの図解は、親株側のランナーを2cmほど残して切り、反対側は短く切る(短く切った方向に花房が出る)としているので、2cmほど残った長いほうが親株側。花房はその反対に出ます。長いほうをプランターの奥(壁側)に向けて置く

❌ランナーの跡が見つからないので、あきらめて適当に植える

⭕クラウンが傾いている側に花房が伸びる(タキイ通販Q&A)。栃木県の研究報告も、クラウンに傾斜を与えればランナー軸方向に関係なく傾斜方向に花房が伸びるとしています。跡が分からないときだけの代用ではなく、こちらが優先。傾きを手前に向け、苗自体も20〜25度手前へ傾けて植える

❌しっかり植えようとしてクラウンまで土をかぶせる

⭕クラウンは地上に出す。土をかけるのは根まで(タキイ栽培マニュアル)

❌根鉢を崩して、根をほぐしてから植える

⭕根鉢は崩さずそのまま植える。栃木県農業試験場は「根土がある場合にはそのまま定植すると植え傷みが少なく、初期収量が増加する。」としています(促成栽培の資料。原典の既定は「根を広げて植え付け」で、引用した一文はその例外として書かれています。家庭のポット苗は根土がある側です。同じ段落の「やや深植えとする。」は産地の夜冷苗を根づかせるための相対的な深さで、本記事は家庭のポット苗を対象にクラウンを出すタキイの指示を採ります)。植え付け後はたっぷり水をやって活着を促す(タキイ栽培マニュアル)

プランターの大きさと株数|株間は資料どうしでも24〜40cmと幅がある

ポイント

株間は資料によって違います。栃木県農試の24cmからタキイ栽培マニュアルの40cmまで幅があります。家庭菜園メディアがよく書く「20cm」は、今回確認した範囲では根拠が示されていませんでした。

調べていて最初に困るのがここです。株間の数字が資料ごとに違います。

表5:いちごの株間として示されている数字
出典株間前提(原文に書かれている範囲)
栃木県農業試験場『いちご「とちおとめ」の栽培技術』24cm程度促成栽培。「株間をせばめると単位面積当たりの収量は多くなる傾向があるが果実肥大が劣り、上位等級の発生も少なくなる。」
タキイネット通販 Q&A25〜30cm畝幅100〜120cmの高畝(条数の記載はなし)
タキイ種苗 イチゴ栽培マニュアル30〜40cm程度露地(普通)栽培。畑への定植(条数の記載はなし)

なお家庭菜園メディアでよく見る「20cm」は上の3つより狭い値ですが、2026年9月に「いちご プランター 育て方」で上位にあった5記事を確認した範囲では、いずれも出典が示されていませんでした。 上の資料のどれかが間違っているという話ではありません。作型も畝幅も違えば、必要な株間は変わります。なお「2条高畝栽培が一般的」であることは栃木県の研究報告が示していますが、タキイの2つの資料自体は条数に触れていません。 そして読者が持っている65cm型のプランターに何株入るかは、今回確認した範囲ではどの資料も答えていません。そこでここから先は、一次情報の株間を出発点にした当サイトの逆算です。一次情報そのものではない点に注意してください。

計算ルールはひとつだけです。「幅 ÷ 株間」の小数点以下を切り捨てる。ただし最低1株(=1株あたり株間1つ分を割り当て、両端にも株間の半分ずつ余白を残す。株間は2株以上あるときの話なので、計算が1を下回っても1株は植えられます)。これで端に寄りすぎるのを防げます。

表6:プランターの幅から逆算した株数(**当サイトの計算**。「幅÷株間」の切り捨て・最低1株)
プランターの幅(外寸)株間24cm株間30cm株間40cm当サイトの推奨
約65cm(標準サイズ)2株2株1株2株(株間40cmを採るなら1株)
約80cm(大型)3株2株2株2〜3株
直径30cm前後の丸鉢(10号)1株1株1株1株

幅は外寸で計算しています。プランターには壁の厚みがあり、下ほどすぼまる形のものが多いので、内寸ではもう少し窮屈になります。表の値は上限だと考えてください。 「もっと入るのでは」と思ったら、それが詰めすぎのサインです。栃木県農試は、株間をせばめた場合について「単位面積当たりの収量は多くなる傾向があるが果実肥大が劣り、上位等級の発生も少なくなる」としています。詰めて株数を増やしても、1株あたりの実は小さくなるわけです。加えていちごは実がプランターの外へ垂れる前提で植えるので(4章)、詰めると葉が重なり、風が通らず、実が葉の下にもぐります。風通しは病気にも直結します(9章)。

―深さより、土の量のほうが効く

タキイの栽培マニュアルは、いちごの根について「イチゴの根系は比較的範囲が狭く、大部分が地表面から30cm以内に分布するため、乾燥の影響を受けやすい」と書いています。深さは必要ないが、乾かしてはいけない——これがいちごの特徴です。 プランターの表示と中身の差は2種類あります。深さはカタログ表示より3cmほど小さく(メーカー公表値で確認できた製品での差。製品によって変わります)、土の量は外寸をかけ算した体積のおよそ半分にしかなりません。どちらもプランターのサイズの選び方でメーカーの公表値をもとに検証しています。いちごに効いてくるのは深さより土の量のほうで、少ないほど乾きが早くなります。浅型を選ぶなら、水やりの回数が増える前提で置き場所を決めてください。

肥料|効かせすぎると、実ではなく葉が増える

ポイント

タキイが挙げる「花が咲かない」原因の3つ目が多肥です。肥料は足りないより、多いほうが失敗につながります。

3章で引いた一文をもう一度見ます。「また定植が早すぎたり、多肥で栄養生長にかたよると花芽分化が遅くなり花数が減ります。」ここで言っている栄養生長とは、葉や茎を大きくする方向の生長です。肥料が効きすぎると株はそちらに傾き、花芽を作る方向へ切り替わるのが遅れます。「元気に育てよう」という善意が、いちばん効く時期に裏目に出ます。

施肥の量について、タキイは2つの単位で数字を出しています。栽培マニュアルは元肥として10㎡あたりチッソ120〜160g、リン酸200g、カリ180g。ネット通販のQ&Aは家庭向けに1㎡あたり化成肥料100g、石灰100g(植え付けの10日前までに土とよく混ぜる)としています。どちらも畑の面積あたりの数字で、プランターにそのまま割り算して当てはめられる値ではありません(土の量も、肥料が水で流れ出る条件も違います)。桁感としては使えます——65cm型の外寸を65×22cmとすると約0.14㎡なので(当サイトの計算)、1㎡あたり100gなら15g前後という見当です。ただし製品の使用量表示を優先してください。培養土の容量から元肥のグラム数を出す方法は化成肥料8-8-8の使い方で扱っています。

  • 元肥は定植の2週間前までに。栽培マニュアルは「イチゴの根は肥料焼けに弱いので、施肥は定植の2週間前までに行います。」としています(同じタキイでも通販Q&Aは「植え付けの10日前まで」。安全側に早い2週間前を採っています)。市販の元肥入り培養土を使うなら、買ってすぐ植えるのではなく、土を入れて水を通してから数日おくほうが無難です
  • 肥効が長く続くものを選ぶ。同マニュアルは「栽培が半年程度になるため肥効が長く続く緩効性肥料や有機質肥料を施用するとよいでしょう」としています。いちごは秋に植えて春に採る、半年かかる作物です

追肥のタイミングも決まっています。同マニュアルは「追肥は2回行い、1回目は11月に根を張らせて越冬させるため、2回目は2月に新葉の生長を促すために施します。」としています。11月と2月の2回だけです。施す位置も同じ段落に書かれています。同マニュアルは追肥について「肥料が根や葉に直接触れないように注意し、株元から10~15cm以上離れたところに施用します。液肥を利用すると効果が高くなります。」としています。ここはプランターでそのまま成立しません。65cm型に2株なら株間はおよそ32cm、株元から10〜15cm離すと隣の株の根もとか鉢の縁に当たります。だからプランターでは液肥のほうが現実的です(原典も「液肥を利用すると効果が高くなります」としています)。量は製品ラベルの希釈倍率と施用間隔に従ってください。いちごは多肥で花数が減るので、ラベルに幅がある場合は薄いほう・回数の少ないほうから始めます。なお同じ段落には1回あたりの成分量も示されていますが、単位の表記が「30g/10m」となっていて面積か長さか読み取れません。同マニュアルの元肥が10㎡単位で書かれていることから10㎡と読むのが自然ですが、原文の表記のままでは断定できないため、この記事では数値を引きません。 冬のあいだ株が動いていないように見えても、タキイは「秋から冬にかけて光合成産物は根に転流し、根量が増加して糖やデンプンが根に蓄えられます」と説明しています。見えないところで根が仕事をしている時期なので、1回目の追肥には意味があります。

❌花が咲かないので、追肥を足してみる

⭕多肥は花数を減らす方向に働く。咲かない原因は肥料不足ではなく、植え付け時期・苗・冬の低温の不足を疑う(2章・3章・7章)

❌元肥入りの培養土に、さらに肥料を混ぜて植える

⭕いちごの根は肥料焼けに弱い。元肥は定植の2週間前まで、が栽培マニュアルの指示

冬|「かわいそうだから」と室内へ入れる前に、確かめたいこと

ポイント

いちごの冬は、守る時期ではなく低温を積算する時期です。葉物の防寒とは目的が逆になります。ただしこの章の結論は、資料の記述ではなく当サイトの判断です(下のnote)。

タキイの栽培マニュアルは、いちごの休眠をこう説明しています。「自然条件下で生長するイチゴは晩夏の温度と日長の低下に反応して花芽分化し、秋の短日・低温条件に反応して葉が小さくなりわい化して(ロゼット:不良環境への耐性が強まった状態)、休眠に入ります。次第に休眠を深めていき、休眠は11月ごろに最も深くなります。」そして「その後、冬の低温で休眠打破され、春になって温度が上昇すると開花結実します。休眠は生育に不適な冬の低温に対する適応であり、生き残るためのものといえます。」

つまり冬の低温は、いちごにとって耐えるだけのものではなく、必要なものでもあります。11月から12月にかけて葉が赤くなり、地面に貼りついたように小さくなるのは、枯れかけているのではなく休眠の姿(ロゼット)です。ここで「元気がないから室内へ」と動くと、休眠を覚ますための低温が積算されません。

❌霜が降りそうな夜だけ、いちごのプランターを暖かい室内に取り込む

⭕屋外に置いたままにする。5℃以下が積算されるのは、まさにその冷え込む夜です

❌5℃以下になるならいいだろうと、暗い玄関や北側の廊下に置く

⭕低温だけでなく光も要る。屋外の日が当たる場所に置く

❌葉が赤くなって小さくなったので、枯れたと思って抜く

⭕それが休眠の姿(ロゼット)。タキイは「葉が小さくなりわい化して」休眠に入ると説明しています

❌冬は動いていないので、水やりを止める

⭕プランターの土は畑より乾く。根はこの時期に糖やデンプンを蓄えています。土の表面が乾いたら日中に水をやる

注意したいのは、保温がいつでも不要という話ではないことです。同じタキイの栽培マニュアルは、「休眠が開けた2月上中旬には、保温するためにトンネル支柱を1mごとに立ててビニールなどで被覆します。冬の寒さには強いですが、地上部が伸長をはじめると低温に弱いので、トンネルで温度を確保するとよいでしょう。半月ぐらいは密閉し、葉が伸びはじめたらトンネル内の温度の上がりすぎを抑えるため両側のすそを少し開けて換気するようにしましょう。」としています。夕方はまた閉じ、開花期(4月・平均気温10℃以上)には「トンネルのビニールは開放するようにします」。 つまり原典の「保温」は、閉じっぱなしではありません。①半月ほど密閉 → ②葉が伸びはじめたら日中は開けて換気 → ③夕方は閉じる → ④開花期に開放、という順です。ベランダに置き換えると、晴れた日は必ず開ける、開花が始まったら外す(以後は霜の夜だけ覆って翌朝外す=9章)。プランターは土が少ないぶん日中の温度が上がりやすく、覆ったままでは人工授粉もできません。この読み替えは当サイトによるものです。 寒さに当てるのは休眠中まで。休眠が明けて葉が伸び出したら、今度は低温に弱くなります。 あわせて、このタイミングで葉かきをします。同マニュアルは「春先に、休眠から覚めて新葉が展開してきますが、その新葉が5~7枚のころになったら、老化した葉や枯れ葉を株元から取り除いて風通しをよくし、病気を予防します。」としています。保温の開始と同じ引き金(新葉の展開)で動く作業で、しかも開花前に済ませておく必要があります——理由は9章の灰色かび病のところで書きます。 判断はカレンダーではなく株の状態でしてください。この記事は3章で、必要な低温の量は品種で数倍違うと書いています。それを認めておいて保温の開始だけを日付で決める理由がありません。葉が地面に貼りついたまま(ロゼット)なら休眠中、新しい葉が立ち上がって伸び出したら休眠明けです。一般地ではおおむね2月上中旬に当たります。

葉物の防寒とは目的が逆になる点も押さえておきます。プランターの冬の防寒対策で扱ったコマツナの13℃・ホウレンソウの平均5℃は、低温が収穫を終わらせないようにするための数値です。いちごの場合、低温は収穫を始めるための条件です。同じ「冬の寒さ」でも、葉物といちごでは避けるものと必要なものが入れ替わります。 なお同じ「5℃」でも基準が違います。あちらのホウレンソウの5℃は原文が「平均温度」と書いている値(日を平均した気温)、いちごの5℃はその瞬間の気温が5℃以下になっている時間の積算です。数字が同じでも比べられません。

春|開花から収穫まで、温度の足し算で進む

ポイント

春からは低温ではなく積算温度の世界です。開花の合図も、収穫までの日数も、温度で決まります。

タキイの栽培マニュアルは、「4月、平均気温が10℃以上になると開花をはじめます。」としています。開花したら次は受粉です。同マニュアルは、「花が早く咲いて訪花昆虫がいないときは、形のよい果実を作るため雌しベに花粉を付けます。」として、やわらかい筆の穂先で花粉を取り、中心部のめしべに付ける方法を示しています。ベランダは虫が少ないので、この作業の価値は畑より高くなります。

受粉が不十分だと何が起きるかも、同マニュアルに書かれています。「果実の肥大には種子の形成が必要で、花床上の種子数が多いほど果実は大きく肥大します。受粉・受精が完全に行われて種子が形成されると果実は正常に発達しますが、部分的にしか行われないと正常に肥大せず奇形果となります。」 いびつな実は、品種や肥料の問題ではなく受粉の問題であることが多いわけです。ただし受粉がうまくいかない原因は「虫が来ない」だけではありません(9章)。

表7:春以降に見る温度と作業(**数値はタキイ種苗 イチゴ栽培マニュアル。「意味」列は当サイトの読み**)
指標数値意味
開花の開始平均気温10℃以上(4月)ここから受粉・肥大のフェーズに入る
果実の肥大適温昼間20〜24℃/夜間6〜10℃昼夜で差が要る。夜も暖かい室内は肥大に向かない
果実の成熟適温15〜20℃初夏の高温になるほど品質は落ちる方向
開花から収穫まで積算温度600〜700℃日数ではなく温度の足し算で決まる
収穫期間露地栽培で約1か月程度長く採り続ける作物ではない

積算温度の使い方:開花した日から毎日の平均気温を足していき、合計600〜700℃になるころが収穫期です。平均15℃なら40〜47日、平均20℃なら30〜35日という見当になります(この日数換算は当サイトの単純計算で、原典は積算温度の値までしか示していません)。「何日で採れる」ではなく「暖かい年は早い」と理解しておくほうが実態に合います。

実がふくらむ時期は、水を切らさないでください。タキイは根系の分布について「大部分が地表面から30cm以内に分布するため、乾燥の影響を受けやすい」として、土の水分を保つことが大切だとしています(原文は畑の話です)。土の量が少ないプランターほど乾きが早く、しかも実がふくらむ時期は株の要求量がいちばん多いので、朝の水やりを欠かさないようにします。ただし溜めるのは逆効果です。タキイは畑について「排水の悪い畑では、うねの高さを30cm程度の高うねとし過湿を防ぎます」としています。プランターでは受け皿に水を溜めたままにせず、鉢底から抜けることを確かめてください。用土そのものの選び方はプランターのサイズの選び方と化成肥料8-8-8の使い方を参照してください。 この時期に出てくるランナーは切ります。同マニュアルは、開花のころにランナーが次々に発生することについて「果実の栄養を取られるため早めに除去します」としています。増やすのは収穫が終わってからです。 もうひとつ、収穫期の注意として同マニュアルは「赤く完熟したものから収穫していきますが、ナメクジの食害が多いので注意します。」と書いています。ナメクジの食害痕の見分け方は野菜の葉に穴が開く原因で、県の病害虫資料をもとに整理しています。

春に実を失う原因|霜と受粉失敗・灰色かび病・うどんこ病

ポイント

寒さに当てるのは休眠中まで。開花が始まったら、いちごは寒さから守る側に回ります。ここを冬と同じ扱いにすると、花はついたのに実が採れません。

―① 開花期の霜・低温による受粉失敗(冬とは扱いが逆になる)

先に断っておくと、「霜の夜は覆う」と書いた資料を見つけたわけではありません。これは次の2つからの当サイトの判断です。タキイの作型では、株は2月上中旬からトンネルの下にあり、「4月、平均気温が10℃以上になると開花をはじめます。…この時期、トンネルのビニールは開放するようにします。」——つまり開花までは覆われている前提です。ベランダでトンネルを使わないなら、その前提が外れます。 花粉と低温の関係については、吉田裕一「イチゴの花芽と果実の発育異常」(園芸学研究 23(2)、2024年)が、過去の研究をまとめて「花芽発育期および開花受粉時の極端な高温や低温が花粉の機能低下を招くことが確認され」としています。受粉がうまくいかない原因は虫の不在だけではないわけです。 ただし順番は間違えないでください。同じ論文は、この記述の直後に、ハウス栽培でのミツバチ利用技術が普及して受精不良果が劇的に改善されたことを挙げ、「ハウス・トンネル栽培での受精不良果発生の主な原因が受粉不足であったことを示していると考えてよいだろう」としています。まず人工授粉。それでも実がいびつなままなら、開花中の冷え込みを疑う、という順です。なおこの論文は総説(過去の研究をまとめたもの)です。

❌冬に「寒さが必要」と読んだので、3〜4月の遅霜の夜もそのままにしておく

⭕霜の予報が出た夜は花房を覆い、翌朝は必ず外す。低温が必要なのは休眠中まで(7章)。覆いっぱなしは多湿を作り、灰色かび病の条件になります(下の②)

❌実がいびつなのは品種のせいだと思い、人工授粉を続けるだけにする

⭕まず人工授粉を確実にやる。吉田2024は、ハウス・トンネル栽培での受精不良果の主な原因は受粉不足だったとしています。低温を疑うのはそのうえで

―② 灰色かび病(実が灰色のかびに覆われる)

奈良県農業総合研究センターの「イチゴの病害」は、灰色かび病についてこう書いています。「主として果実に発生し、褐色の病班に灰色のかびを生じる。菌核又は菌糸で越冬し、翌年胞子を飛散して主として花弁、柱頭に感染し幼果が侵される。老化葉・枯死葉は最初の伝染源となりやすい。促成・半促成栽培では開花期から発生が始まる。」発生条件は「イチゴ以外の多くの植物に寄生し、気温20℃前後でハウス内の多湿が続くと発生しやすい。」——原文は「ハウス内の」と書いています。ベランダのプランターはハウスではありませんが、株を詰めて風が通らない状態は、同じ方向の条件です。5章で株数を抑えたのはこのためでもあります。 ここで時期が効いてきます。灰色かび病は花弁と柱頭に感染するのだから、伝染源の除去は開花前に終わっていないと間に合いません。タキイが指定しているのはまさにその時期です——「春先に、休眠から覚めて新葉が展開してきますが、その新葉が5~7枚のころになったら、老化した葉や枯れ葉を株元から取り除いて風通しをよくし、病気を予防します。」(7章)。収穫が始まってから慌てて葉を取るのでは遅いわけです。 家庭で打てる手は限られますが、新葉5〜7枚のころに古い葉と枯れ葉を取る/傷んだ実はこまめに除く/株を詰めない/実を土に直接触れさせない——この4つが確実にできる対策になります。4つ目についてタキイは「定植後の乾燥防止と収獲の際、果実の汚れと病気の予防も兼ねて黒マルチを利用するとよいでしょう。」としています。プランターでは、敷きわらを敷く・実を鉢の縁に垂らす・実の下に受けを置くのが代わりになります(この置き換えは当サイト)。

―③ うどんこ病(葉から始まり、実にも出る)

同じ奈良県の資料は、うどんこ病について「葉の裏面や果面に白い霜のようなかびを生じる。春先4月~5月及び9月~10月頃に葉に発生し始め、風媒により蔓延し、開花期以降では、がく・果梗・果実に発生する。」としています。春先4月〜5月はまさに収穫期です。「一般に湿度が高いほど発病しやすい傾向にあるが、乾燥状態でも発生は多い。」とも書かれており、乾かしておけば防げるものではありません。 白い粉状のかびが葉に出たときの見分け方は、きゅうりの葉が白くなる原因で、うどんこ病とハダニの食害痕の違いとして整理しています。

ベランダで読み替えるときに、確認しておきたいこと

ポイント

この記事が引いた資料は、露地栽培か、ハウスでの促成栽培か、育種のための研究です。ベランダのプランターを対象にしたものは1件もありません。プランターに移すときに変わるものと、確認できていないことを先に出しておきます。

畝幅100〜120cm、10㎡あたりの施肥量、トンネル被覆、夜冷短日処理——引用した資料が前提にしているのは畑やハウスです。ベランダのプランターとは次の点が違います。

表8:畑・ハウスの資料をプランターに読み替えるときの差(**右列はすべて当サイトの読み替え**)
項目資料(露地・ハウス)の前提ベランダのプランターでは
株間畝に植える。24〜40cm(作型で違う)幅で決まる。65cm型なら2株(表6・当サイトの逆算)
乾燥畝とマルチで土壌水分を保つ土が少なく早く乾く。冬も水やりが要る
温度地温は気温よりゆるやかに動く鉢は外気の影響を受けやすい。具体的に何℃になるかは確認できていません(寒冷地は7章のnote)
元肥面積あたりの成分量面積あたりの値は割り算で移せない。桁感だけ借り、製品の使用量表示に従う
追肥株元から10〜15cm以上離して施用65cm型に2株だと株間はおよそ32cm。10〜15cm離すと隣の株か鉢の縁に当たるので、液肥が現実的(6章)
収穫の向き2条高畝で花房を通路側へ伸ばす1列なので手前へ。ランナー跡を奥(壁側)に向ける(4章)
開花期の保護トンネルの下で開花し、開花期に開放する覆いがない。霜の夜だけ自分で覆い、翌朝外す(9章)

対象の作型についても線を引いておきます。この記事が扱うのは、秋に植えて春に収穫する一季なりの作型です。引用した農研機構の成果情報も、一季成り性および中間性の品種を対象にしたものです。四季なり性の品種は花芽分化の性質が異なるため、この記事の資料はそのまま当てはまりません(この線引きは当サイトの理解で、引用した資料は四季なり性を扱っていません)。苗を買うときに、一季なりか四季なりかをラベルで確認してください。ほかの秋植え野菜との締め切りの比べ方は秋植え野菜のプランター栽培にまとめています。

まとめ|秋にやることは「待つ」、冬にやることは「動かさない」

ポイント

いちごのプランター栽培でいちばん効くのは、手を増やすことではなく、手を出す時期を間違えないことです。

表9:時期別・やることとやらないこと(**時期と冬の置き場所は一般地の目安**。寒冷地は[7章](#fuyu)のnote。**本文と各章の結論を当サイトがまとめたもの**)
時期やることやらないこと
9月中旬〜10月末日平均気温が25℃を下回ってから植える。クラウンを出し、ランナー跡を奥(壁側)に向ける(元肥入りの土は2週間前までに用意)暑いうちに植える/元肥を足す
11月1回目の追肥。水やりを続ける葉が小さくなったのを枯れたと判断する
12月〜1月屋外の日が当たる場所に置いたまま。水やりだけ暖かい室内に入れる(寒い夜だけ、も含む)/暗い場所に置く/乾かしたまま放置する(凍害と乾燥は7章のnote)
2月ごろ2回目の追肥。葉が伸び出したら保温を始める(日中は開けて換気)。老化葉・枯れ葉を株元から取り除く(新葉5〜7枚のころ)休眠中(葉が貼りついたまま)から保温を始める/覆いを閉じっぱなしにする
4月〜開花したら覆いを外す。人工授粉。ランナーは切る。霜の夜は花房を覆い、翌朝外す追肥を足して花を増やそうとする/霜を「寒さが必要」と読み違える/開花してから枯れ葉を取り始める
4〜5月完熟から収穫。実が土に触れないようにする。傷んだ実はこまめに除く株を詰めたまま放置する(灰色かび病)/受け皿に水を溜めたままにする

花が咲かない・実がならないとき、原因はたいてい前の季節にあります。春に何かを足しても戻せません。逆に言えば、秋の植え付け時期と冬の置き場所さえ外さなければ、あとは表9の作業を順番どおりにやるだけで足ります(追肥2回・水やり・開花前の葉かき・人工授粉・ランナー除去・霜よけ)。新しく何かを足す必要はありません。 いちごが「難しい」と言われるのは手間の多さではなく、失敗が半年後に分かることのほうにあります。ほかの野菜の今月の作業と締め切りは栽培カレンダーに、育て方の基本は野菜から探すにまとめています。

よくある質問

スーパーで売っているいちごの品種の苗を買えば、同じものが採れますか?▾

同じ品種でも、同じ栽培条件にはなりません。市販のいちごの多くはハウスでの促成栽培によるもので、この記事が扱う露地・プランターでの秋植えとは温度も作型も違います。タキイ種苗の資料が示す果実の肥大適温は昼間20〜24℃・夜間6〜10℃、成熟適温は15〜20℃です。ベランダの春の気温がこの範囲からずれれば、大きさや熟し方が変わります。品種名より、一季なりかどうかと、苗の状態を優先して選んでください。

植え付けが11月になってしまいました。今からでも植えるべきですか?▾

タキイネット通販は一般地の定植を「9月中旬以降、遅くとも10月いっぱいで終了してください。」としています。枠を過ぎた遅植えは、花数が減る方向に働きます。タキイの栽培マニュアルも「秋遅くに老化苗を植えると、苗の生長は低温の影響で定植後すぐに止まり、花芽の数が少なくなります」としています。植えてはいけないという記述は資料にありませんが、春の収穫量には期待しないほうが実態に近いと考えています。新しく買い足すのは見送り、すでに苗が手元にあるなら植えて越冬させ、翌春にランナーを採るための親株にする——そう切り替えるのが現実的です(FAQ4)。

マンションの高層階のベランダでも育ちますか?▾

育てられないという資料は見つかりませんでしたが、階数ごとの条件を調べた資料も見つけられませんでした。確認できていないのは、冬に5℃以下が何時間積算されるか(7章)と、訪花昆虫がどれだけ来るかの2点です。前者は風当たりが強いぶん低温は積算されやすい可能性がありますが、実測した資料がないため断定しません。後者は人工授粉で補えます。低層階でも高層階でも、人の手で受粉させる前提で準備しておくのが安全です。

1年目に採れた株は、翌年も使えますか?▾

「そのまま2年目も実らせる」という使い方を、タキイは示していません。同マニュアルが書いているのは苗作りの章で、「この子株を採取、育苗して定植するのが一般的です。2年目以降は生育がよく、よい果実をつけた株を選んで親株とし、伸びてくるランナーが込みあわないよう誘引、配置します。」——つまりよい株はランナーを採るための母株(親株)にして、新しい苗を作るという前提です。株の更新が基本だと考えてください。 収穫が終わったらランナーが伸びてくるので、1節目の子苗(太郎苗)を避け、2節目以降を育てて秋に植え直します(3章)。同マニュアルは「何年も続けてとると育ちが悪くなってきますので2~3年を目安に親株を更新します」ともしています。

冬に不織布をかけるのはだめですか?▾

この記事は「かけてはいけない」とは言いません。資料で確認できているのは、休眠中は低温が必要なこと(タキイ)と、休眠が明けて「地上部が伸長をはじめると低温に弱い」こと(同)です。問題になるのは、休眠中から暖めて低温の積算を妨げることのほうです。不織布1枚の保温が休眠打破をどれだけ妨げるかを測った資料は見つけられませんでした。判断材料が足りないため、この記事は休眠が明けてから保温というタキイの順番を採り、その「休眠明け」を葉が伸び出したかどうかで判断します(日付から状態への読み替えは当サイト。タキイの原文は「休眠が開けた2月上中旬には」です)。そして覆いは閉じっぱなしにせず、晴れた日中は開け、開花したら外してください(7章)。なお鉢土が凍る地域は事情が別で、凍結を避ける目的の覆いは検討に値します(7章のnote)。資材ごとの保温効果の考え方はプランターの冬の防寒対策を参照してください。

参考・出典

病害虫の防除に農薬を使う場合は、その作物への登録がある薬剤を、ラベルに記載された希釈倍数・使用時期・使用回数の範囲で使ってください。 栽培環境(地域・天候・品種・容器の大きさ)によって症状の出方は変わります。判断に迷う場合は、お住まいの都道府県の病害虫防除所や普及指導センターにご相談ください。

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